鍼灸

ほくと鍼灸院ができるまで【中編】鍼灸のMIRAIを作るプロジェクト

こんにちは。鍼灸師の坂口友亮(さかぐちともあき)です。

前回のあらすじ…「鍼の効果を脳科学で解明しよう!」という病理医 加藤容祟(かとうやすたか)先生の挑戦的な試みが、北海道帯広市の北斗病院でスタートした。

パートナーとして白羽の矢が立ったのは、加藤先生が大学時代に所属していた研究室の仲間である鍼灸師の谷地一博(やちかずひろ)先生。

鍼を1本打つごとに脳波を測定する研究では予想以上の結果が得られ、病院の信頼を得ることに成功する。

谷地先生は、札幌市白石区で快気堂鍼灸院白石を営む鍼灸師です。現代医療からこぼれ落ちた人を鍼で助けたいという情熱はハンパではなく、鍼灸の技術向上のため一年間に新車一台分のセミナー費用をつっこむという勉強熱心かつクレイジーな鍼灸師です。

谷地先生(左)と加藤先生(右)

鍼に脳科学のメスを入れるこのチャレンジ、鍼灸師にとっては非常にリスキーな試みでもあります。なぜなら、MEGという機械が脳波を測定しているからです。よく「鍼灸が効くかどうかは気持ちの問題」なんて言われることもありますが、脳波には患者さんの気持ちが入り込む余地はありません。

MEG室内で鍼をする谷地先生

鍼灸の効果が丸裸にされ「やっぱり気持ちの問題かもね…」と残念な結果となり鍼灸そのものが否定されてしまうリスクを背負って、実験は始まりました。

結果は当初の予想をはるかに超え、加藤先生はもちろん、MEGのプロフェッショナルである脳研究者の鴫原良仁(しぎはらよしひと)先生が驚く程の数値が得られました。

(時計回りに)手を伸ばしているのが鴫原先生、加藤先生、山本先生、須藤先生、谷地先生

ここからどうやって鍼灸の未来を作り出すプロジェクトが始まったのか?谷地先生の記事をご覧いただく当時の臨場感が伝わると思います。3本続けてどうぞ!

あらすじ:研究が進み、医師を初めとする病院関係者に鍼治療の医療としての有用性が認知されはじめた。すると「なぜ、患者さんにこれほど役立つものが、適切に提供されていないのか?」という問いが関係者の中で生まれ始める。

この問いの答えを医師と一緒に探っていくことで、「エビデンスが乏しい」「施術方法が統一されていない」「鍼灸を提供する場がなく、経済的に不遇な鍼灸師が多い」という鍼灸業界の大きな問題点が浮き彫りになってきた。

あらすじ:研究が進む中で浮き彫りになった鍼灸業界の問題点。打開するカギは医療のシステムにあると考えた加藤先生と谷地先生。

鍼治療のエビデンスを確立し、鍼灸師の育成を行い、より多くの人に鍼灸の効果を届けるため「プロジェクトMIRAI」を立ち上げ、鍼灸師の未来を切り開くチャレンジがはじまった。

あらすじ:「プロジェクトMIRAI」の立ち上げ、実行組織としてJASTAC(日本鍼治療標準化学会)の設立と、鍼灸師の未来を切り開く動きが高まる。

北斗病院鍼治療センターでの活動、施設への派遣、地域スポーツへの貢献など…鍼灸師の働き方を変える取り組みのプロトタイプが動き始めた。

次回、ほくと病院ができるまで【後編】

病院での取り組みが評価され、鍼治療を希望する患者さんが増えてきたものの、病院では受け入れられる患者さんに限りがあります。そこで、病院外に鍼灸院を立ち上げることに。

しかし、プロジェクトに参加する鍼灸師は札幌に自分の院を持つメンバーばかり…そこに、東京から鍼灸師の坂口(この記事を書いている人)がやってくる。

つづく。